PMFに達するのが大事、ってSaaSベンチャー関与されている方なら何度も耳にタコができるくらい聞いてきたこの言葉。
でも、PMFって実は常に変わり続けるし、ゴールのない定性的な、そしてかなり感覚的な、表現ですよね。調達ラウンドやってるとPMF達成しています、っていう経営者の方いらっしゃるんですが、どう達成していますか?って聞くと、
・納得のいくプロダクトになったからです!
・3社顧客取れたんですよ、今月!
・アンケート取ったらNPS高かったんです、30点超えてました! ..etc
など、まちまちな見解をいただきます。私はVCではないので、資金調達をお願いしに行く側ですが、PMF終わってるってなんとなく感じて持って行くときはどんな時なのか、あくまで個人的見解ですが説明していければなぁと思います。
PMFって?
よくある定義は以下ですね。
「顧客を満足させる最適なプロダクトを最適な市場に提供している状態」
でも、これって非常に抽象的で感覚的な説明ですよね。分解してみましょう。
【顧客を満足】させる【最適なプロダクト】を【最適な市場】に提供している状態
要素1:【顧客を満足】=顧客満足度 → チャーン、NRR、NPS etc
要素2:【最適なプロダクト】=なんだ?→エンゲージメント、LTV
要素3:【最適な市場】=希望の値段で、希望の顧客層が捕まえられる → aveACV、ARPU等のプライシング関係、pipeline・月次問い合わせ数などの顧客関係、GMR(gross margin ratio)、CACなどのコスト面
というくらいに、非常に多岐に渡り、実際PMFを達成するのって非常に難しい(少なくとも検証含めればB2B SaaSでは数年はかかりそう)ものです。
PMFを達成したと思える状態〜定量編〜
分解した要素を元に、それぞれ利用する指標を選択すると以下のようかなぁと考えています。
顧客満足
利用指標:月次平均チャーンレート(直近6ヶ月分)
最適なプロダクト
利用指標:WAU/MAU
最適な市場
利用指標:
①NewACV/NewClientが3ヶ月連続でボラ10%程度(プライシングが複数ある場合は別)
②パイプラインが3ヶ月連続増加(velocityがゼロは除く)
③LTV/CACが3くらい(だいたい超えるので気にしない)
顧客満足について
顧客満足だったら、顧客満足度調査をすればいいじゃないかって言われるんですが、個人的にはやっぱりチャーンをみるのがいいのかな、と思っています。
初期ユーザで評価するなら、基本ゼロ付近いて欲しいですよね。一緒に組み上げて行くものですし。
順次引き合いできているユーザが含まれてくることになりますが、その際は個人的には商談段階で何ヶ月持ちそうなユーザかを事前に自分基準で設定して、そことのGAPを測っていることが多いです。自分が営業に行かない案件は営業担当に、”このお客さんの課題何年/何ヶ月うちのサービス使えば解決できそう?”って聞きます。
余談ですが、当初課題が解決できれば契約が終わってしまうという話ではなくて、課題解決できて継続利用に意味があるって思ってもらうためのスパンを考えている感じです。
なぜ6ヶ月なのか?
これは、本当にあくまでの感覚値でしかないのですが、一個営業パターン決めて売れると、そのパターンで数ヶ月〜1年くらいは進みます。そして、そのパターンでの解約が発生するのも、年間契約にしていることが多いので概ね数ヶ月に渡って生じて来ます。
なので、単純に1ヶ月・3ヶ月とかではなく、営業パターンの採用期間に依存はするものの、だいたい6ヶ月くらいの月次チャーンの変動が安定して来たかどうかでみています。
最適なプロダクトについて
これが一番定量評価しにくいですし、サービス内容によってよく変える部分ではあるのですが、基本サービスへのエンゲージメント要素を重視しています。個人でコード書いてると特にこの機能もこの機能も、ってなってしまいますし、NiceToHaveがどうしてもよく思いついちゃって脱線しちゃうので、個人への戒めも含めて。
クライアントにとって最適なプロダクトって基本は解決したい課題に対して、solutionになってるかってところがメインです。なので、毎日・毎週・毎月発生する課題って異なるように、課題のタイプによってエンゲージメントを測る期間も異なってきます。
WAU/MAUであれば、だいたい50%程度目指します。なんで50%なのって聞かれると難しいのですが、だいたい課題ってそんなもんで発生するんじゃないってイメージが多いから。特に管理部門にいるからか、月次タスク以外はまぁ週次か隔週くらいでは利用が発生するので。
最適な市場について
基本的には、
①新規獲得客の平均ACV
②パイプラインの増加(純増)
の2要素がメインで考えています。補足でLTV/CACとか入れますが、まぁほんと補足ですね。
あと、前提として、ソフトウェアとか業務区分の細かいコスト計算を会計に入れていないこの段階ではGrossMargin90%ぐらいじゃないときついかなぁ。脱線しますが、USでいいSaaSって言われてるような会社はみんなGross Margin 75%はあるそうです。会計基準の違いはあるにせよ、将来的に監査法人とかと話して会計区分の調整が色々入る以上、初期段階で粗利率が70%とかだと将来的に50%前後まで落ちる可能性が高いので。
ここは、MRRの伸び速度はそこまで重要視していない(この段階ではですが。。)指標を選んでます。パイプラインも純増(SQL: Sales Quolified Lead が純増)してれば、どれくらい増えてるか、どの程度ロスっているかは、PMF後にさらに改善させる部分かなと思っているので。
MRRの伸び速度は気にしなくてもいいのか?
MRR Velocityという指標でよく検証するMRRの伸び速度が足りてるかですが、個人的には初期段階から非常に重要な指標だと思っています。ぶっちゃけ、LTV/CACとかなんか比じゃないくらい。。
でも、初期段階はこれがよく揉めるんです。。1社に力を入れて検証したいって思いもあるし、営業チーム作るのはPMF終わってからだっていう人もいるし。まぁ千差万別な部分かなと。
それでも、結局ある程度の母数がいないと何事も検証できないのが常なので、誰か・そして自分を説得できる要素を作るためにも、チャーン前提である程度のクライアント数は最初に取るべきじゃないかなぁと。
ここら辺は、1個別記事で書きたいくらいなので、ここではこれまでにします。
まとめ
あくまで個人的な感覚ではあるものの、PMF達成に向けて何を改善すればいいかと考えたときに、最初にゴールがないと改善できないタイプの人には目標設定として、なんらか指標ベースでPMFを定義するのも手段だよな、と思って記事にしました。
異論も多いでしょうし、あくまで個人的見解なので、参考までに読んでもらえれば嬉しいです。