2020年3月27日、コロナ問題真っ最中の中ではあるが、株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会報告書が公表されていたので、読んでみた。
協議会の概要
当該協議会は令和元年12月に金融庁がスタートアップにIPO難民が増えたことについて、IPO銘柄の増加を目指して設定された。
主な構成メンバーは、以下が12月段階で公表されていた。
日本公認会計士協会
監査法人
日本ベンチャーキャピタル協会
ベンチャー企業関係者
証券会社
協議会設立趣旨
株式新規上場に係る監査事務所の選任等に関する問題につき、関係者で連絡協議を行うため、
「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」を設置する。
報告書概要
現状と課題
- 大手監査法人のシェアが8割程度で推移
- IPO監査の新規契約件数は、直近5年間で大幅に増加
- 大手は、監査手続の厳格化や働き方改革等により減少傾向
- 準大手は、直近5年間で3.6倍に増加し、2019年には大手を上回る
- 中小は、IPO監査に意欲を示しているが、経験に乏しく、敬遠される傾向
必要とされた環境整備
色々と書かれていたが、基本以下に帰結する内容。まぁ協議会の開催も3回だけなので、当初からある程度のゴールの絵は決まっていたのかなと思う。
- 中小事務所のリストなど作り、中小事務所を監査受嘱者とする流れの醸成
- 監査法人間で人の融通や、やめ会計士の活用をする
なお、中小監査法人とは監査法人の中で、大手・準大手に含まれない事務所をいうイメージ。ざっくり所属会計士が数十名規模の監査法人。
大手監査法人(Big4と呼ばれた各社):あずさ、トーマツ、新日本、あらた
準大手:太陽、東陽、三優、PwC京都、仰星
個人的感想
会計士サイド
監査の品質という目に見えない、かつどこまで言っても俗人的になりすぎるものに依拠しすぎなのではないだろうか。。。この頃の会計士協会の会長通牒とかみても、監査の品質って言葉に非常に寄ってる感じ。
マーケット再編成の中で、主に新規上場がグロースマーケットに行き着くことになるのであれば、一体の資本市場とはいえ、監査という言葉を1つにせずに、監査 for グロースマーケットを作り上げていくぐらいの気概があってくれたらと思う。
あとは、大手はやっぱり高い。。元AZ所属だからいえた立場ではないけど、監査というビジネスにおいて、スタートアップはそもそも儲かるカテゴリではない。
他方で、監査を受ける側になって思うことは、大手でも準大手でも正直担当者が業界やSaaSなどのビジネスに対して関心がない人間がこれば、品質云々の前によくわかってない人間と噛み合わない話をすることになるケースは多い。
監査は人である、って昔教えられた身からすると、人の育成というか、興味関心を持ってスタートアップをみて欲しいなと思う。
証券会社サイド
引受責任があるのでどうしても大手にリクエストしたくなるのは気持ちはよくわかる。ここに尽きるんだけど、気持ちはよくわかる。。
IPOゴールにならないように、どこの監査法人でもいいから上場させようは、個人投資家という立場からは辛いものもあるけど、大手に頼んだって上場ゴールがなくなるとは思えない。また、ファンド案件は基本上場ゴールになるケースの方が多いんだし。
どこが監査法人になったかよりも、経営チーム内に上場ゴールじゃなくて、上場はあくまで通過点、株価の上下も短期的にみずに中長期でビジネスを伸ばして市場に評価してもらう姿勢を身に付けてもらうようにサポートしていってもらうのが本質かなぁと。
あとは、リーテルとの関係で何度も公募価格下げるのはやめて。。
ベンチャー企業サイド
とりあえず、CFOが攻めも守りもできる万能型ってケースは実は非常にレアケースだと思って、攻め担当・守り担当おけるくらいまで事業成長させましょう。
あと、監査法人上がりをCFOに置くのも一手ではあるんだけど、業務フィットするタイミングってのがあるので、シードやシリーズAくらいまではなかなかワークしないケースが多いと思ってもらった方がベターかも(もちろん人によるけど、肌感的に)。
参考リンク
報告書概要:https://www.fsa.go.jp/singi/kansaninkyougikai/houkoku/20200325/02.pdf
報告書本体:https://www.fsa.go.jp/singi/kansaninkyougikai/houkoku/20200325/01.pdf