【令和8年分】法定調書の作成を生成AIで効率化|支払調書の対象判定とチェック

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年が明けると、経理・総務には法定調書の作成が待っています。特に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、取引先ごとに源泉徴収の有無や金額基準を確認する必要があり、毎年手間のかかる作業です。さらに令和8年分(2027年1月提出分)は、源泉徴収票のみなし提出や電子提出義務の基準引き下げなど、制度面の変更が重なります。

この記事では、令和8年分の主な変更点を整理したうえで、生成AI(ChatGPTやClaudeなど)を使って支払調書の対象判定とチェックを効率化する手順を解説します。コピペで使えるプロンプト例と、マイナンバーを扱う業務ならではの注意点もまとめました。

対象読者は、法定調書を担当する経理・総務の実務担当者と、その管理職の方です。年末までに準備を始めておくと、1月の繁忙期をかなり落ち着いて迎えられます。

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令和8年分の法定調書で変わる点(2027年1月提出分)

まずは、今回の法定調書作成で押さえておくべき変更点です。国税庁が2026年8月に公表した「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」をもとに、実務への影響が大きいものを表にまとめました。

項目 令和8年分の内容 実務への影響
提出期限 令和9年2月1日(月)まで 1月31日が日曜のため翌日が期限
給与所得の源泉徴収票 市区町村へ給与支払報告書を提出すれば、税務署へ提出したものとみなされる 税務署提出用の源泉徴収票の作成・提出が不要に
電子提出義務の基準 前々年(基準年)に提出すべきであった枚数が30枚以上の法定調書はe-Tax等で提出 従来の100枚基準から引き下げ。書面提出できない会社が増える
退職所得の源泉徴収票 提出省略の規定が廃止され、居住者に支払う退職手当等はすべて税務署へ提出 退職者がいた会社は対象者の洗い出しが必要
書面の様式 令和8年9月の国税システム更改に伴い様式を変更 書面提出なら国税庁サイトの最新様式を使う

電子提出義務は、法定調書の種類ごとに判定します。たとえば給与所得の源泉徴収票が30枚以上でも、報酬・料金等の支払調書が30枚未満なら、支払調書は書面でも提出できます。逆に、支払調書だけが30枚以上になるケースもあるため、種類別に前々年の枚数を確認しておきましょう。

なお、制度の詳細は個別の状況で異なります。判断に迷う場合は、国税庁の手引や顧問税理士に確認してください。

支払調書の作成対象を整理する(報酬・料金の提出範囲)

生成AIに判定を手伝わせる前に、人間側でルールを明文化しておくことが大切です。AIに渡すルールがあいまいだと、判定結果もぶれてしまいます。報酬・料金等の支払調書について、主な提出範囲は次のとおりです。

支払の区分 提出範囲(同一人への年間支払)
外交員・集金人・電力量計の検針人・プロボクサーの報酬など 50万円超
弁護士・税理士等の報酬、原稿料・講演料など(上記以外の報酬・料金) 5万円超
プロ野球選手などの報酬・契約金 5万円超
馬主が受ける競馬の賞金 1回の支払が75万円超の場合、その年の全支払額

実務で見落としやすいのは、次の2点です。1つ目は、源泉徴収をしなかった報酬や未払の報酬でも、提出範囲に該当すれば記載が必要なことです。2つ目は、支払調書の対象かどうかは取引先の名目ではなく、支払の内容で決まることです。「業務委託費」として計上していても、実態がデザイン料や講演料であれば対象になり得ます。

ここで挙げた金額基準は代表的なものです。区分の詳細は国税庁の手引で必ず確認してください。この表を自社向けに整えたものが、後でAIに渡す判定ルールの土台になります。

生成AIで法定調書作成をチェックする全体の流れ

生成AIに法定調書そのものを作らせるのではなく、「対象の洗い出し」と「突合チェック」を補助させるのが現実的です。最終的な判断と提出は、必ず担当者と承認者が行います。全体の流れは次のとおりです。

  1. 会計データの抽出:会計ソフトから、支払手数料・外注費・業務委託費・講師謝金など報酬が混ざりやすい勘定科目の仕訳を、1年分CSVで出力します。
  2. 個人情報の除去:マイナンバー、口座番号、個人の住所などの列を削除します。取引先名は「取引先ID」に置き換えると安全です。
  3. 取引先別の集計:スプレッドシートのピボットテーブルで、取引先IDごとに年間支払額と源泉徴収税額を集計します。
  4. AIによる区分判定:摘要と金額をAIに渡し、報酬・料金の区分候補と提出要否の候補を出してもらいます。
  5. 源泉徴収との突合:源泉徴収税額が0なのに報酬らしい取引、逆に源泉徴収があるのに対象外と判定された取引を、AIに一覧化させます。
  6. 担当者のレビュー:AIが「要確認」とした行を中心に、契約書や請求書の原本で確認します。
  7. システムへの登録と提出:確定した対象者を給与・会計システムやe-Taxに登録し、承認を経て提出します。

ポイントは、AIを使う工程(4と5)と個人情報を扱う工程(7)を分けることです。AIには「判定に必要な最小限の情報」だけを渡し、マイナンバーと結びつけるのは社内システムの中だけにします。

ワークフローの構成イメージ

n8nやDifyなどで半自動化する場合は、次のようなノード構成が考えられます。最初は手作業で回し、精度を確認してから自動化するのがおすすめです。

  • トリガー:担当者が仕訳CSVを共有フォルダに置く
  • 前処理:不要列(個人情報)の削除、取引先名のID置換
  • 集計:取引先ID×勘定科目で年間支払額・源泉税額を集計
  • LLM判定:区分候補・提出要否・判定理由・確信度を出力
  • ルール判定:金額基準によるしきい値チェック(AIの出力と照合)
  • 出力:スプレッドシートに「要確認」フラグ付きで書き戻し、Slack等で担当者に通知

AIの判定と、金額基準のルール判定を並べて出すのがコツです。両者が食い違った行だけを人が確認すれば、レビューの範囲を絞り込めます。

コピペで使えるプロンプト例(支払調書の対象判定)

ここでは、取引先別に集計したデータをAIに渡して、区分と提出要否の候補を出してもらうプロンプト例を紹介します。判定ルールは、前のセクションの表を自社向けに整えたものを貼り付けてください。

あなたは日本の法定調書実務に詳しい経理担当者のアシスタントです。
以下の【判定ルール】に従い、【データ】の各行について
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の区分候補と
提出要否の候補を判定してください。

【判定ルール】
- 弁護士・税理士等の報酬、原稿料、講演料、デザイン料など:同一人への年間支払が5万円超で提出対象
- 外交員・集金人などの報酬:同一人への年間支払が50万円超で提出対象
- 法人への支払は、源泉徴収の対象外となる取引が多いため「要確認」とする
- 摘要から内容を判断できない場合は推測せず「要確認」とする

【出力形式】表形式で、次の列を出力
取引先ID / 区分候補 / 年間支払額 / 提出要否候補 / 判定理由(40字以内) / 確信度(高・中・低)

【データ】
取引先ID,勘定科目,摘要,年間支払額,源泉徴収税額
V001,支払手数料,顧問契約 月額,660000,67386
V002,外注費,Webバナー制作,88000,0
V003,講師謝金,社内研修講師,45000,4594

このプロンプトでは、「わからない場合は推測しない」と明示している点が重要です。生成AIは、もっともらしい誤り(ハルシネーション)を出すことがあります。「要確認」という逃げ道を用意すると、無理な断定を減らせます。

源泉徴収との突合チェック用プロンプト

次は、源泉徴収の有無と区分判定の矛盾を見つけるためのプロンプトです。1つ目の判定結果を貼り付けて使います。

以下は支払調書の区分判定結果です。
次の観点で矛盾や確認が必要な行を抽出し、理由とともに一覧にしてください。

1. 区分候補が報酬・料金なのに、源泉徴収税額が0の行
2. 源泉徴収税額があるのに、提出要否候補が「不要」の行
3. 源泉徴収税額が、支払額の10.21%(100万円超の部分は20.42%)と大きくずれている行
4. 確信度が「低」の行

出力は「取引先ID / 該当観点 / 確認すべき書類 / 確認ポイント」の表にしてください。
税額の正否は断定せず、確認ポイントの提示にとどめてください。

源泉徴収税額は、支払額に消費税が含まれているかどうかで計算が変わります。請求書で消費税額が区分されていれば、税抜金額を基準にできる取扱いもあります。そのため、AIには「ずれの指摘」までを任せ、正否の判断は人が行うようにしましょう。

AIの出力をレビューするためのチェックリスト

AIの出力をそのまま使うのではなく、次のチェックリストで最終確認を行います。毎年使い回せるよう、社内の手順書に組み込んでおくと便利です。

  • 前々年の提出枚数を法定調書の種類ごとに確認し、30枚基準で提出方法を決めたか
  • 税務署提出用の給与所得の源泉徴収票が不要になったことを、給与担当・システム担当と共有したか
  • 退職者がいる場合、退職所得の源泉徴収票の提出対象を洗い出したか
  • 源泉徴収をしていない報酬、未払の報酬を集計から漏らしていないか
  • AIが「要確認」とした行を、契約書・請求書の原本で確認したか
  • 取引先ID と実際の取引先・マイナンバーの紐づけを、社内システム上で照合したか
  • 支払を受ける者に写しを交付する場合、マイナンバーを記載していないか
  • 書面提出の場合、国税庁サイトの最新様式を使っているか
  • 作成者と承認者を分け、承認の記録を残したか

チェックリストの各項目に「担当者」と「確認日」の欄を設けると、引き継ぎや監査対応にも役立ちます。

導入時の注意点・リスク(マイナンバー・個人情報の扱い)

法定調書は、マイナンバーという特に慎重な取扱いが求められる情報を扱う業務です。生成AIを使う際は、通常の業務以上に注意が必要です。

マイナンバーは生成AIに入力しない

マイナンバーは、法令で利用目的が限定されている情報です。生成AIのチャット画面やAPIに入力することは避けてください。前処理の段階で該当列を削除し、AIに渡すファイルに含まれていないことを毎回確認します。個人の氏名や住所も、判定に不要であれば取引先IDに置き換えましょう。

利用するAIサービスの契約形態を確認する

無料版の生成AIサービスでは、入力データがモデルの学習に使われる設定になっている場合があります。法人向けプランやAPI利用では、学習に使わない設定や契約が用意されていることが多いです。具体的な条件はサービスごとに異なるため、社内で利用を認めるサービスを情報システム部門と確認してください。

ハルシネーションと最終責任

生成AIは、税法の条文や金額基準を誤って説明することがあります。AIの判定はあくまで「候補」であり、提出の最終責任は会社にあります。判定ルールは人が国税庁の手引で確認したものを渡し、AIに独自の解釈をさせないことが大切です。

権限管理と社内規程

AIを使った集計ファイルには、取引先と支払額という機密性の高い情報が含まれます。共有フォルダのアクセス権は担当者と承認者に限定しましょう。また、生成AIの利用範囲を定めた社内ガイドラインに、法定調書業務での利用ルールを追記しておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 法定調書を生成AIだけで作成しても問題ありませんか?

おすすめしません。生成AIは対象の洗い出しや矛盾の指摘には役立ちますが、税法の解釈を誤る可能性があります。また、マイナンバーを扱う工程にAIを組み込むことは、情報管理の面でリスクが大きいです。AIは「下準備とチェックの補助」に限定し、最終的な判定・作成・提出は担当者と承認者が行う体制にしてください。

Q2. 電子提出義務の30枚基準は、どの年の枚数で判定しますか?

前々年(基準年)に提出すべきであった法定調書の枚数で判定します。令和9年に提出する法定調書であれば、令和7年中に提出すべきであった枚数が基準です。判定は法定調書の種類ごとに行うため、源泉徴収票と支払調書は別々に数えます。自社がどちらに該当するか、早めに前々年の提出控えを確認しておきましょう。

Q3. 無料の生成AIツールでも、この手順は使えますか?

個人情報を完全に除去したデータであれば、技術的には使えます。ただし、取引先ごとの支払額も社外秘の情報です。入力データの学習利用の有無やデータの保存期間は、サービスやプランごとに異なります。会社として利用を認めたサービスとプランを使い、社内ガイドラインに沿って運用することをおすすめします。

まとめ:令和8年分は早めの準備と「AIは補助」の線引きを

令和8年分の法定調書は、提出期限が令和9年2月1日(月)です。源泉徴収票のみなし提出、電子提出義務の30枚基準、退職所得の源泉徴収票の提出省略廃止など、変更点が重なります。

生成AIは、支払調書の対象の洗い出しや、源泉徴収との突合チェックで力を発揮します。一方で、マイナンバーは入力しない、判定は候補にとどめる、最終確認は人が行うという線引きが欠かせません。

次のアクションとして、まずは前々年の法定調書の提出枚数を種類別に確認しましょう。あわせて、昨年分の仕訳データで今回のプロンプトを試し、自社の判定ルールを整えておくと、1月の作業がぐっと楽になります。

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参考リンク

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