【本記事は旧seesaaブログからの移行記事になります】
読んで欲しい人
- 税率差異作成が初めての方
- 税率差異作って入るけど、いまいち理解しておらず、基礎から考えてみたい人
- 税率差異って何?美味しいのって人
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以前税率差異分析に関する基本的作成方法をまとめました。
でも、正直言って実務の中では、あれだけでは足りません。
事業展開の国際化や別表5の記載の複雑性を加味して、数点補足をしておきます。
1.海外子会社がある場合の特徴
海外子会社がある場合、以下の2点が主な特徴となってきます。
- 実効税率に差異がある
- 別表5のようなものがなく、一時差異の集計が困難
1のケースはさらに以下の2分類に区分けされます。
- 1-1.黒字のケース(細かく言うと、繰越欠損金があるかないかでも異なりますが、それはいずれ)
- 1-2.赤字のケース(細かく言うと、税還付される(北米等)か否かでも異なりますが、それはいずれ)
1-1 黒字のケース
子会社が黒字の場合税金はどうなっているか。普通にPL上に法人税等として計上されてきます。
ということは、差異要因は以下の2点に集約されます。
1-1-1 実効税率の差異
1-1-2 評価性引当額の増減
1-1-1 実効税率の差異
実効税率は国によりまちまちです。
日本では現状約30%ですが、中国・ブラジル25%、インドは34%、シンガポール17%、イギリス19%、アメリカ25%程度となっています。(2018年度直近把握値。毎年のように 税制は各国少しずつ変わりますのでご留意ください)
実効税率分析は日本の税率を基準にします。
そのため、30%と各国の税率差、中国で△5%、インド+4%が差異になります。
計算方法は、
各国の税前利益×税率差=税率差異による影響
⇒各社「海外子会社との実効税率差異」のような名目で開示しているものです。
税率差がマイナスの会社は税負担減少影響を、税率差がプラスの会社は税負担増加影響を及ぼします。
1-1-2 評価性引当額の増減
日本国内の税率差異分析と同様海外でも評価性引当額が変更になった場合は、税率差異として現れてきます。
計算方法は、
各国の評価性引当額増減額×現地の法定実効税率=評価性引当の増減による影響
⇒ここで、一点注意が必要なのは、少し強調してありますが、いづれの国の実効税率の選択するかです。
1-1-1を上記計算方式で計算した場合(これが一番簡単なので普通こうしますが)、1-1-2は現地(在外子会社)実効税率を利用してください。税率の差の影響は全て1-1-1で集計していますので、日本の実効税率を利用すると重複になってしまいます。
さて、黒字のケースが終わり次は赤字のケースです。
1-2 赤字のケース
この場合も差異ケースは1.と同様2つに分類されます(過年度税還付のケースは次回以降で)。
1-2-1 実効税率の差異
1-2-2 評価性引当額の増減
まず、大前提から行きましょう。赤字の会社の場合税前は当然赤字ですが、税金としてはどうなるでしょうか?
お分かりになると思いますが、PL税負担はゼロ(所得ベース税金のみの話をしています)、そして繰越欠損金が発生・増加します。
ようは、この繰越欠損金をどう税効果注記として表すか!
その点だけが1-2-1で問題になります。
とりあえず今回は一番簡単な以下の計算式でいきましょう。
計算方法、
各国の税前損失×税率差=税率差異による影響
そして、1-2-2で評価性引当の増減の中で、繰越欠損金に対しての評価性引当の増減を検討することが簡易であると思います。(1-2-2は1-1-2と計算方法が同一のため省略します)
2. 別表5のようなものがなく、一時差異の集計が困難
このケースは非常にハードルが高いです。すぐに回答があるわけでは無いですが、地道に毎年調整してきたものを積み上げて行くしかありません。
自社で設立した子会社であればコントロール可能な面もありますが、M&Aとかで買収した会社だと過去のPKGにない場合(相手が非上場とか)ハードルが上がりますね。
私が直面したケースだと、イタリアとかはそうでしたが、今はどうなんでしょう。もし該当した場合、過去の申告資料をみながら積み上げを作成していくという地道な作業しか回答がない気もします。まぁDTA/DTL自体の検討資料ないにはある程度含まれているはずなので、そこから類推していきましょう。
まとめ
さぁこれで理論はできました!後は、簡単につくれます。。。。
と、言いたいところですが、それぞれ1-1-2、1-2-2にはトラップが隠されているケースが散見します。 上記の問題については、次回以降にして、今回は実務上よくあるケースの簡易解説に止めておきます。
参考資料・サービス関係
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税率差異分析の概要解説書籍
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