「社内でAIを使った自動化を始めたいが、Difyとn8nのどちらを選べばいいのか分からない」。経理や総務の現場で、そんな相談を受けることが増えています。どちらもノーコードで使えて、生成AIとつなげられる点は共通しています。そのため、名前は知っていても違いを説明できない方は多いはずです。
この記事では、Difyとn8nをバックオフィス目線で比較します。機能・料金・ライセンスの違いを表で整理し、経理・総務・人事の業務別にどちらが向いているかを解説します。あわせて、両方を組み合わせる構成例や、導入前に確認すべきリスクもまとめました。
対象読者は、ツール選定や稟議を任された管理部門の担当者・管理職の方です。エンジニアでなくても判断できるよう、専門用語は最小限にしています。
Dify n8n 比較の結論:「AIアプリを作る」か「業務をつなぐ」か
最初に結論をお伝えします。Difyは「AIを中心にしたアプリを作る道具」です。n8nは「複数のシステムをつないで業務を自動で流す道具」です。どちらもAIを扱えますが、得意分野の重心が異なります。
Difyの得意分野:社内FAQボットや文書を読むAIアプリ
Difyは、オープンソースのAIアプリ開発基盤です。チャットボット、AIエージェント、ワークフローを画面上で組み立てられます。社内規程やマニュアルを読み込ませて回答させる仕組み(RAG:社内資料を検索して回答に使う技術)を作りやすいのが特長です。
作ったアプリはWebアプリとして公開したり、API(外部からプログラムで呼び出す窓口)経由で使ったりできます。つまり「社員が話しかける画面」や「AIの判断ロジック」を作る場面に強いツールです。
n8nの得意分野:SaaS間のデータ連携と定型処理の自動化
n8nは、ワークフロー自動化ツールです。「メールを受信したら」「毎朝9時になったら」といったきっかけで処理を始められます。そこからスプレッドシート、Slack、会計SaaSなどへデータを順番に受け渡します。
AI機能も備えており、公式ドキュメントではOpenAI、Anthropic、Googleなど複数のモデルを接続できると説明されています。ただし主役はあくまで「業務の流れ」です。AIはその途中で使う部品の一つ、と考えると分かりやすいでしょう。
ひと目で分かる基本比較表
| 比較項目 | Dify | n8n |
|---|---|---|
| 主な用途 | AIチャットボット・AIアプリ作成 | システム間連携・業務フロー自動化 |
| 得意な処理 | 社内文書を使った回答、文章生成、分類 | 定期実行、データ転記、通知、承認の流れ |
| 利用者の画面 | Webアプリとしてそのまま公開できる | 基本は裏側で動く(Slack等が窓口) |
| きっかけ(トリガー) | ユーザーの入力やAPI呼び出しが中心 | メール受信、時刻、Webhookなど多様 |
| 向いている担当者 | 問い合わせ対応・ナレッジ整備の担当 | 定型作業を多く抱える実務担当 |
料金・ライセンス・ホスティングの違いを比較
導入判断では、機能より先に費用と契約条件が問われます。ここでは執筆時点(2026年10月)の各公式料金ページの表示をもとに整理します。為替や改定で変わるため、稟議前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
クラウド版の料金プラン比較
| 項目 | Dify Cloud | n8n Cloud |
|---|---|---|
| 無料枠 | Sandbox:無料(メッセージクレジット200) | クラウド版の常設無料プランは表示なし |
| 小規模向け | Professional:年590ドル/ワークスペース(月5,000クレジット、3名) | Starter:月20ユーロ(年払い時、月2,500実行) |
| チーム向け | Team:年1,590ドル/ワークスペース(月10,000クレジット、50名) | Pro:月50ユーロ(年払い時、月10,000実行) |
| 課金の考え方 | ワークスペース単位+AI利用量(クレジット) | ワークフローの実行回数 |
Difyは、クレジットを使い切った後は自社のAPIキーに切り替えられると案内されています。その場合、AIモデルの利用料は別途モデル提供元に支払います。n8nは実行回数で課金されるため、1日に何回動かすかを見積もることが重要です。
セルフホスト時のライセンスの違い
どちらも自社サーバーに無料版を設置できます。ただし、ライセンスはいわゆる完全なオープンソースとは少し異なります。
- Dify:Apache License 2.0に追加条件が付いています。マルチテナント(複数の顧客向けにサービスとして提供する形態)での運用には書面の許可が必要です。また、画面上のロゴや著作権表示を消すことはできません。
- n8n:Sustainable Use Licenseです。自社の社内業務目的や個人利用であれば使えますが、有償で配布するといった使い方は制限されています。
社内のバックオフィス業務に使う範囲なら、どちらも通常は問題になりにくい条件です。一方で、グループ会社や顧客に提供する予定がある場合は、法務部門と条文を確認しておきましょう。
経理・総務・人事の業務別に見るDifyとn8nの使い分け
次に、バックオフィスでよくある業務を例に、どちらが向いているかを整理します。判断の軸は「人がAIと対話するか」「システム間でデータが流れるか」の2点です。
| 部門 | 業務例 | 向いているツール | 理由 |
|---|---|---|---|
| 経理 | 経費精算ルールの問い合わせ対応 | Dify | 規程を読み込ませたFAQボットが作りやすい |
| 経理 | 請求書メール受信→保存→台帳転記 | n8n | メール起点の連携処理が得意 |
| 経理 | 月次決算タスクの期限通知 | n8n | 定期実行とSlack通知を組みやすい |
| 総務 | 社内規程・手続きのQ&A窓口 | Dify | Webアプリとして全社に公開できる |
| 総務 | 契約書の更新期限アラート | n8n | スプレッドシート監視と通知の組み合わせ |
| 人事 | 年末調整や社会保険の質問対応 | Dify | 資料に基づく回答と出典表示がしやすい |
| 人事 | 入社手続きのアカウント発行依頼 | n8n | フォーム入力から各部署への依頼を自動化 |
表を見ると、「質問に答える」「文書を読んで要約する」業務はDifyが向いています。「受け取る・転記する・通知する」業務はn8nが向いています。迷ったときは、その業務の担当者が1日の中で何に時間を使っているかを書き出してみてください。
選定前に確認したいチェックリスト
- 自動化したい業務の「きっかけ」は人の質問か、メールや時刻か
- 連携が必要なSaaS(会計、勤怠、チャット等)は何か
- 社員が直接触る画面が必要か、裏側で動けば十分か
- 扱うデータに個人情報やマイナンバーなどの機微情報が含まれるか
- クラウド利用が社内規程で認められているか、セルフホストが必要か
- 月あたりの想定実行回数・問い合わせ件数はどの程度か
- 運用担当者は誰か、不在時に代わりの人がいるか
この7項目を埋めるだけで、候補はほぼ絞り込めます。生成AIに整理を手伝ってもらう場合は、次のようなプロンプトが使えます。
あなたは業務自動化ツールの選定アドバイザーです。
以下の業務について、Difyとn8nのどちらが適しているか、
または両方の組み合わせが良いかを判断してください。
# 業務内容
(例:取引先から届く請求書メールを確認し、
金額と支払期日をスプレッドシートに転記している)
# 条件
・処理件数:月◯件程度
・連携先:Gmail、Googleスプレッドシート、Slack
・個人情報の有無:あり/なし
# 出力形式
1. 推奨ツールと理由(3行以内)
2. 想定されるワークフローの流れ(箇条書き)
3. 導入前に社内で確認すべき事項回答はあくまで検討のたたき台です。最終判断は、公式ドキュメントや社内のIT担当者の確認を経て行ってください。
Dify×n8n連携のワークフロー構成例
実務では「どちらか一方」ではなく、両方を組み合わせると効果が出やすくなります。n8nが業務の流れを管理し、AIの判断が必要な部分だけDifyに任せる構成です。ここでは想定ケースとして、請求書の受領処理を例に説明します。
想定ケース:請求書メールの一次チェック
例えば、毎月多くの請求書PDFがメールで届く会社を想定します。担当者は内容を確認し、台帳に転記し、不備があれば差し戻しています。この流れを次のノード(処理の部品)構成で自動化できます。
- Gmailトリガー(n8n):特定ラベルの付いた請求書メールを検知する
- 添付ファイル取得(n8n):PDFを取り出し、共有ドライブに保存する
- HTTPリクエスト(n8n→Dify):DifyのワークフローAPIにPDFの内容を送る
- 情報抽出(Dify):取引先名、金額、支払期日、登録番号の有無を読み取る
- 判定(Dify):必須項目の欠けや金額の不整合をチェックし、結果を返す
- 分岐(n8n):問題なしなら台帳に転記、要確認ならSlackで担当者に通知する
- 記録(n8n):処理日時と判定結果をログシートに残す
この構成の利点は、役割分担が明確になることです。AIのプロンプトを調整したいときはDifyだけを、通知先を変えたいときはn8nだけを修正すれば済みます。担当者が異動しても、どこを直せばよいかが分かりやすくなります。
なお、AIの判定結果はそのまま会計処理に使わず、必ず人が最終確認する設計にしてください。具体的な構築手順は、関連記事で詳しく解説しています。
導入時の注意点・リスク(情報漏えい・権限・社内規程)
ツールの比較以上に重要なのが、導入時のリスク管理です。バックオフィスは個人情報や取引情報を扱うため、次の点を事前に確認してください。
- 情報漏えい:クラウド版では、データが外部サーバーで処理されます。各社の利用規約やデータの保存場所、AIモデル提供元の学習利用の扱いを確認しましょう。
- 個人情報・機微情報:給与、マイナンバー、健康情報などは、原則としてAIに送らない運用にします。どうしても扱う場合は、マスキング(伏せ字化)やセルフホストを検討します。
- ハルシネーション:生成AIはもっともらしい誤りを出すことがあります。金額や期日の判定は、元データとの突合や人の承認を必ず挟みます。
- 権限管理:n8nに登録したAPIキーや認証情報は強い権限を持ちます。編集できる人を限定し、退職・異動時の引き継ぎ手順を決めておきます。
- 社内規程との整合:生成AIの利用ガイドラインや情報セキュリティ規程に、新ツールを追記します。稟議書には利用目的、扱うデータ、責任者を明記しましょう。
- 運用の属人化:一人が作ったワークフローは、その人しか直せなくなりがちです。構成図と設定内容を手順書に残しておくことが大切です。
セルフホストは情報管理の面で有利ですが、サーバーの更新やバックアップを自社で担う必要があります。IT担当者がいない場合は、まずクラウド版で小さく試すのが現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 非エンジニアでも使いやすいのはDifyとn8nのどちらですか?
AIチャットボットを作るだけなら、Difyのほうが早く形になりやすい傾向があります。テンプレートが用意されており、社内資料を読み込ませる流れも画面上で完結します。一方、n8nは連携先ごとに認証設定が必要で、最初は少し手間がかかります。ただし、慣れると業務全体を自動化できる幅はn8nが広いです。まずは自動化したい業務の性質で選ぶのがおすすめです。
Q2. 無料で試すにはどうすればよいですか?
Difyは、執筆時点でクラウド版の無料プラン「Sandbox」が用意されています。n8nは、無料のCommunity Editionを自社のPCやサーバーに設置して試せます。クラウド版の試用期間の有無や条件は変わることがあるため、公式サイトでご確認ください。いずれの場合も、試験段階では実データではなくダミーデータを使うと安心です。
Q3. MakeやZapierとの違いは何ですか?
MakeやZapierも、n8nと同じワークフロー自動化ツールの仲間です。大きな違いは、n8nがセルフホストを選べる点にあります。データを社外に出したくない企業では、この点が選定理由になることがあります。一方、DifyはAIアプリ作成が中心のため、これらのツールとは役割が異なります。連携ツールとAIアプリ基盤は、競合ではなく補完関係と考えるとよいでしょう。
まとめ:Difyとn8nは目的で選び、組み合わせて使う
Difyは「AIと対話するアプリ」を作るのが得意で、社内FAQボットや文書チェックに向いています。n8nは「システム同士をつなぐ流れ」を作るのが得意で、転記・通知・定期処理に向いています。料金体系も、Difyはワークスペースとクレジット、n8nは実行回数と考え方が異なります。
次のアクションとして、まずは自部門の業務を3つ書き出し、本記事のチェックリストで分類してみてください。そのうえで、効果が見えやすい業務を1つ選び、無料枠やダミーデータで小さく検証するのがおすすめです。
それぞれの得意領域を把握して、適切にツール選択していくことは、SaaS時代と変わりませんが、これからはツールベンダーが説明してくれない時代がやってくるかもしれませんので。。
ドキュメントを読む癖がつくといいかもですね。
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参考リンク(公式情報)
- Dify Pricing(公式料金ページ)
- n8n Pricing(公式料金ページ)
- Dify LICENSE(GitHub公式リポジトリ)
- n8n Sustainable Use License(GitHub公式リポジトリ)
- n8n Docs:Advanced AI

